修学旅行と聞くと、「楽しかった」「学校生活の中で一番の思い出がある」と感じている方も多いのではないでしょうか。修学旅行は生徒にとって、一大イベントです。早く行きたい、行き先を早く知りたいと、ワクワクしているお子さんもいるでしょう。
一方で、教員は安全確保を第一に考えなければならないため、気を休められない、という方も多いかもしれません。なぜなら、修学旅行は楽しいイベントにもなりますが、生徒が危険にさらされる場になるかもしれないからです。
では、なぜこうした修学旅行を実施するのでしょうか。 今回は修学旅行の目的と、安全確保の概念がより強まった経緯をご紹介します。
修学旅行は、1886年から始まり、90%以上の中学校で実施されています。
1988年に文部科学省から出された告示・通達によると、修学旅行の目的は、 「平素と異なる生活環境の中にあつて見聞を広げ、集団生活のきまりを守り、公衆道徳について望ましい体験を得ることなど」 と書かれています。
要約すると、「知識を広げる」、「集団生活のきまりを守れるようになる」、「社会に生きる一人として守るべきルールを身につける」ことが修学旅行の目的として挙げられています。 学校が位置している地理では得られない経験ができることも、修学旅行の醍醐味です。 「知識を広げる」に関しては、重点的な活動に「歴史学習」をあげる学校が多いそうです。 そのため、修学旅行で沖縄県に行ったり、京都府に行ったりして、歴史を学んだ方も多いのではないでしょうか。
知識は本や映像からでも得られますが、体験しないとわからないこともあります。 そうした見聞を広げるためにも、修学旅行が実施されることがあるようです。 また、生徒は授業などで集団生活を行っていますが、日常とは違う場面での集団生活となると、修学旅行が初めてという生徒もいるでしょう。
そのような場でもきちんときまりを守れるよう、修学旅行では班分けをして自主的な活動を促す場が設けられていることもあります。 社会に出てからも集団生活に馴染めるよう、学校生活でこのような経験ができるのは貴重かもしれません。なぜなら、公益財団法人日本修学旅行協会の竹内秀一理事長によると、修学旅行は日本独自の文化だからです。
なお、現在は東アジア諸国にも修学旅行の文化は広まっているそうです。 また、竹内理事長によると、修学旅行は「自然や文化などに親しむ体験を積むための実際的な機会」と説明し、国際理解にも役立っていると述べています。 数は少ないかもしれませんが、修学旅行先が海外の学校もあります。
そうして異国の文化に触れることで、国際理解を促す目的が修学旅行にはあるようです。 ちなみに、もっとも多い海外修学旅行先は台湾です。近年、台湾への修学旅行は増えているそうで、日本からのアクセスの良さが理由となっているのかもしれません。
修学旅行の目的は、先ほども書いた通り、日常とは違う場で見聞を広めることなどが挙げられます。 しかし、いつもと違う場所だからこそ、細心の注意が必要となってくるのです。
1988年には、文部科学省から「修学旅行における安全確保の徹底について」という告示・通達が出されました。この通達には、以下の内容が含まれています。
・修学旅行は事故等の発生の余地をはらんだものであることを再認識する必要がある
・関係業者に過度に依存することなく主体性をもつて修学旅行の安全確保につき万全を期するべきである
・十分な実態の把握と必要な指導を行うこと
この告示の背景には、1988年に中国・上海を修学旅行中だった生徒たちが列車事故に遭い、28名が亡くなったという経緯があります。
負傷者だけでも60名いたとされ、日本の修学旅行史上初の大事故と言われています。
また、海外の事例となりますが、2014年に起こった韓国のセウォル号沈没事故のニュースを覚えている方も多いのではないでしょうか。
この事故では、修学旅行中だった高校生ら295名が亡くなりました。 このように、修学旅行では危険な状況に陥ることもあり得るのです。
怪我をしなかったとしても、スリや買い物でのトラブルなどに巻き込まれることも起こり得ます。もちろん、教員がどれだけ気を張っていても、避けられない事故は起こるかもしれません。
しかしその確率をゼロにするよう努力するのも教員の役割であり、そのため、生徒にとっては楽しい思い出づくりかもしれませんが、教員にとっては、気の休まる時がない課外実習となるでしょう。
今回は修学旅行の目的と、安全確保についてご紹介しました。 修学旅行は、学校の中から社会に出てルールを学びながら、生活圏と違う地域で新たに知識を広げ、集団で行動することで個人としても成長して行くことを目的として行われています。
一方で、事故など生徒が危険にさらされてしまうこともあるかもしれません。 そうならないためにも、学校教員は安全第一で修学旅行を計画・実施しているのです。